こんにちは。
目黒モナーク動物病院、院長の佐藤です。
今回は、当院でおこなった乳腺全切除を行った猫ちゃんの症例をご紹介します。
手術内容としては、
まず、
・リンパ節の切除を含めた右側乳腺全切除術
・避妊手術
を同時におこないました。
避妊手術を同時におこなった目的としては、性ホルモン分泌刺激を抑えるためです。
その後、
避妊手術1か月後には左側の乳腺の腫れが引いたため、
・左側乳腺全切除
こちらを行いました。
猫の乳癌は浸潤性が高くリンパ性に進行するため、
肺を含む他臓器への転移が認められない場合は、通常、先に片側の乳腺を全切除します。
その後、残った反対側の乳腺にシコリが見られない場合も、
全切除することが有効となります。
右側の乳腺の病理組織の結果は乳腺癌と診断されており、
左側の乳腺は幸いにも乳腺炎と診断されました。
現在、補助療法として化学療法を提案しています。
※最下段に写真があります。
猫の乳腺腫瘍はリンパ管内浸潤やリンパ節転移、遠隔転移が高い確率で生じるため、術後の補助化学療法が必要と考えられていますが、有効性については議論が残るといわれています。
報告ではドキソルビシンとシクロフォスファミドの併用療法により、転移あるいは肉眼的病変のある乳腺癌の猫の約半数が短期間の寛解が得られることが示されています。
今後、有効な分子標的薬(がん細胞など特定の細胞だけを攻撃する治療薬)が明らかになれば、飛躍的に使用される治療法になると考えられています。
以下、今回の症例の写真になります。